東京高等裁判所 昭和60年(ネ)1639号 判決 1985年9月24日
控訴人 有限会社 鶴川企画
右代表者代表取締役 川島慎也
右訴訟代理人弁護士 平松久生
被控訴人 株式会社日本不動産取引情報センター
右代表者代表取締役 田島利貞
右訴訟代理人弁護士 山田齊
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一 控訴代理人は、「原判決中、控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文同旨の判決を求めた。
二 当事者双方の主張は、次に付加するほか、原判決事実摘示のとおりであり(但し、原判決七枚目表一行目の「いずれを」を「いずれかを」と訂正する。)、また、証拠関係は、本件記録中の証拠目録記載のとおりであるから、これを引用する。
1 控訴人の主張
仮登記担保権と抵当権が併用されている場合に、抵当権の実行としての競売により仮登記担保権が消滅するのは、当該権利者が競売手続を選択し、仮登記担保権固有の権利行使を放棄した結果である。しかるに、右競売により仮登記担保権に劣後する短期賃借権までが消滅すると解することは、あたかも当該権利者が仮登記担保権固有の権利を行使し、その本登記手続を経由したのと同じ結果を認めるものであって、法律の解釈を誤っている。
2 被控訴人の答弁
控訴人の右主張は争う。
理由
一 当裁判所も、被控訴人の本訴請求は原判決認容の限度において理由があるものと判断する。その理由は、次に付加するほか、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。
仮登記担保権が設定されている不動産について抵当権の実行としての競売が行われた場合に、仮登記担保権が当該不動産の売却によって消滅することは、仮登記担保契約に関する法律一六条一項の定めるところであり、また、右により消滅する仮登記担保権に対抗することができない賃借権等の取得が右売却によりその効力を失うことは、同条二項及び民事執行法五九条二項の定めるところであって、これらの規定によれば、本件における控訴人の短期賃借権が本件建物の売却により効力を失ったものであることは明らかである。控訴人の主張は、右規定を無視するものであり、到底採用することができない。
二 よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 中島恒 裁判官 佐藤繁 塩谷雄)
<以下省略>